griver - "S/T" (1997 or late '96)![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiZv6vZWQCIGuO9VA8zBAGORh1EAFjpc2tBcaH2UeW4TZ7ZU5r8lxnCjXaFmetq70396HSib4GAN8FAQyOBojOxYZ1qKuQJGh5z4gH8tHK585UBih1B8lAQyv4_g6XpCwbnbjxk6Xt8_6l8JJi082Ub03ZXDyn40bBBvgEr4JfqItypQxWjDlMp1meAU3mO/w102-h102/%5BLP%5D%2001.jpg)
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VINYL: Tyle-Vora Records (wilmington, North Carolina)
CD: Point The Blame Records (Quebec, Canada)
(画像2枚目は1997年または'96年リリースのCD版の背面。彼らは2曲収録の7インチシングルやthe exploder等とスプリットをリリースするなどしていたが、フルアルバムはこのセルフタイトルが最初にして最終作)
griverはハードコアパンク及びエモ・スクリーモの中でもその陰鬱さによってのみ自己を規定しているようなバンドであり、当時ですら早くも遅くもない中途半端なスピードで暗く重苦しいサウンドをアルバムの始まりから終わりまで鳴らし続ける。サウンドはザラっとして乾いているが1曲目『the letter I never had』が絵葉書のモチーフによって表現しているように、詩情は心の中にジメジメと吹き溜まってやがて腐り始める内心をじっと凝視しながら呪詛のように吐き出す。外気のそっけなさと対照的に内面では動揺や虚しさがグズついているそのような情感は1曲目のタイトルが連想させる『大佐に手紙は来ない』(ガルシア=マルケス)や、内面の最も畏ろしいものを捉え詩で表現することに生涯を費やしたディキンソン等近代米文学と同質の不穏に包まれているが、先天的に信仰を内在するこれら文学との決定的な違いはハードコア・パンクが神を持つこともまた生得的に、自明に起こり得ないことである。
作品らしくすること、作劇装置的にエンディングを演出するための技法ではなく、ただそこにあってひたすらにリアルでシリアスでしかない後悔/自嘲/諦観/憤りと憂鬱が解決することなど決してないままアルバムは自己破壊的に文字通り終わっていく。
このような絶望的ムードはアメリカ東南部の果てのバンドであったgriverとは真逆の西海岸側、カリフォルニア州ゴリータ(Goleta)のインディーレーベル・Ebullition Recordsのリリースがドグマの如く備えているものだが、楽曲毎のスピードやテンションには大きな緩急をつけず一貫してミドルテンポであることがやがて齎す耽溺するような陶酔が、具体的にはjuliaを想起させる。
このバンドでギターボーカルを執ったのがDave Laneyであり、その後の彼は有名どころで云えば2000年頃sleepytime trioに参加するBen Davisとmilemarkerを結成、その2016年作でもmilemarkerのメンバーとしての彼の演奏が聴ける。